第33話「歌姫の詩−勇者の章−」 第4章
「歌姫の詩」

 ユミカルヴァイネ王国が建国され、長い年月が流れました。
 ハイナルディア共和国独立による混乱はあったものの、代々の国王は安定した治世をしき、王国は平和のうちにありました。

 しかしあるとき、“魔精”と呼ばれるものが現れ、世界は再び混乱の時代を迎えます。“魔精”は世界を、最初の2人がすべてを創る前にあった混沌へと戻すことを望んでいました。
 現れた“魔精”は闇の力を持った人間の願いを受けた魔獣や人妖を率いてレイファーミナに侵攻してきました。

 その戦いは初め、戦いとも呼べないほどに一方的なものでした。人間はただただ起こることに怯えており、指導者であったノエル王は勇敢に戦いましたが、“魔精”には敵いませんでした。
 スプライトもまた、多勢に無勢で、ただ見ていることしかできなかったのです。
 すべては、その前にもたらされた預言者−神の言葉どおりでした。

 しかし、奇跡は起きました。

 それは、“魔精”との戦いにノエル王が敗れてからしばらく経ったときのこと。
 地方貴族の次男であったセシル=エイレネ=ヴァンガードが神託を受けたのです。
 セシルは神に光の力を与えられ、怯えていた人間を鼓舞して率い、スプライトにも協力を求めました。
 “魔精”は、神から与えられた光の力の前になすすべなく、またアンレイルシアの軍勢も相反する願いと自らの属性に惑うしかありませんでした。

 こうして、レイファーミナとアンレイルシアとの戦いは終わりました。

 その後、スプライトと人間の間の子である、魔力を持ち不老のハーフスプライトという種族が生まれ、ユミカルヴァイネ王国の王族、貴族になりました。
 セシルは新しくたった王の下、宰相となって国を治める助けとなり、再びレイファーミナに平和と安定をもたらしたのです。

 彼は後に、再び“魔精”が現れるという神託を受け、こう伝えています。

 「再び混沌を愛し
  破滅を望む者現れ
  世界崩壊に瀕す

  そのとき
  神の力を得し者現れ
  その力もて
  闇を排し
  世界を救わん」

 と。


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