勇者の章 プロローグ
「歴史書の紐解き」

 ユミカルヴァイネ王国が建国され、長い年月が流れました。
 スプライト自治区がハイナルディア共和国として独立したことによる混乱はあったものの、代々の国王は安定した治世をしき、王国は平和のうちにありました。

 しかしあるとき、第7代国王ノエル=メルポメネ=ユミカルヴァイネが“深き森”を見つけてしまったことから、悲劇は起きました。

 “深き森”から流れ出る、闇の力を持った人間の魔力に操られたノエル王は、その封印を解き放ってしまったのです。
 闇の力を持った人間は自由となり、今度こそ世界を自分のものにしようと魔獣や人妖を率いてレイファーミナに侵攻してきました。

 その戦いは初め、戦いとも呼べないほどに一方的なものでした。人間はただただ起こることに怯えており、指導者であったノエル王も封印を解いたときに、闇の力を持った人間に殺されてしまっていました。 
 スプライトもまた、多勢に無勢で、ただ見ていることしかできなかったのです。

 しかし、奇跡は起きました。

 それは、闇の力を持った人間が目覚めてからしばらく経ったときのこと。
 地方貴族の次男であったセシル=エイレネ=ヴァンガードが神託を受けたのです。
 セシルは神に魔力を与えられ、怯えていた人間を鼓舞して率い、スプライトにも協力を求めました。
 そして優れた指揮能力を発揮して見事アンレイルシアの軍勢を破り、神から授かった光の力をもって闇の力を持った人間を再び“深き森”へ追いつめ、再度封印を施したのです。

 こうして、レイファーミナとアンレイルシアとの戦いは終わりました。

 その後、スプライトと人間の間の子である、魔力を持ち不老のハーフスプライトという種族が生まれ、ユミカルヴァイネ王国の王族、貴族になりました。
 セシルは新しくたった王の下、宰相となって国を治める助けとなり、再びレイファーミナに平和と安定をもたらしたのです。

 彼は後に、再び封印が解けるという神託を受け、こう伝えています。

 「再び混沌を愛し
  破滅を望む者現れ
  世界崩壊に瀕す

  そのとき
  神の力を得し者現れ
  その力もて
  闇を排し
  世界を救わん」

 と。

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